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ロケットラボ、ドイツ企業Mynaricの買収承認を取得 レーザー通信を内製化し宇宙防衛市場へ本格参入

2026-04-01
ロケットラボ、ドイツ企業Mynaricの買収承認を取得 レーザー通信を内製化し宇宙防衛市場へ本格参入

ロケットラボ(Rocket Lab、Nasdaq: RKLB)は2026年3月30日、ドイツの光通信端末メーカー「Mynaric(マイナリック)」の買収に関して、ドイツ連邦経済・エネルギー省から規制当局の承認を取得したと発表した。取引金額は約1億5000万ドルで、4月中に完了する見通しだ。

Mynaricとは何か、なぜ買収するのか

画像Mynaricの宇宙用レーザー機器  

Mynaricはドイツ・ミュンヘンに本社を置く企業で、衛星や航空機向けのレーザー光通信端末を開発・製造している。従来の衛星通信は電波を使うのが一般的だが、レーザー通信は光を使って情報を送ることで、電波通信と比べて通信速度が格段に速く、傍受されにくいセキュリティ性能を持ち、限られた周波数帯域を奪い合う必要もない。衛星間の通信、軍事衛星の安全な通信、地球観測データの超高速転送、偵察機・ドローンからのリアルタイムデータ転送など、次世代の宇宙インフラに不可欠な技術だ。しかし高品質な製品を大量かつ安価に供給できるメーカーが世界にほとんど存在せず、コンステレーション事業者のサプライチェーンのボトルネックになっていた。

ロケットラボはもともと小型ロケット「Electron」の打ち上げ会社として知られているが、近年はエンジン、太陽電池、衛星バス、赤外線センサーと衛星に必要な部品・技術を次々と内製化し、宇宙産業のインフラ企業へと変身しつつある。今回のMynaric買収はその延長線上にある。実はMynaricはすでにロケットラボが米宇宙開発局(SDA)から受注した13億ドル規模の衛星36機製造契約で光通信端末を供給する下請けとして動いており、SDAの他の契約にもサプライヤーとして参加している。両社は商業・防衛の多くの顧客を共有しており、「外部に頼っていた重要部品を自社に取り込む」という判断は自然な流れだ。CEOのピーター・ベック氏は「レーザー通信は現在そして未来の衛星コンステレーションにとって不可欠な技術であり、ロケットラボはそれを大規模に提供していく」と述べている。

ゴールデンドームと防衛市場への布石

画像宇宙船バス製造工場

この一連の動きはトランプ政権が推進する「ゴールデンドーム」構想、すなわち宇宙を含む多層的なミサイル防衛システムの整備と深く結びついている。ベック氏は「SDAのサプライヤー・オブ・チョイスになりたい」と明言しており、ミサイル追跡衛星の製造、レーザー通信の内製化、赤外線センサーの取得と、防衛衛星コンステレーションに必要な要素をすべて揃える戦略が鮮明だ。2025年12月にはロケットラボ史上最大となる8億1600万ドルのミサイル追跡衛星製造契約をSpace Forceから受注しており、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、L3ハリスと並ぶ防衛宇宙の主要プライム企業としての地位を確立しつつある 。 ロケットラボはStarlinkのような自社コンステレーションを運用する計画は持っていない。「コンステレーションを自分で持つ」のではなく「誰がコンステレーションを作っても必ずロケットラボが関与できる構造」を目指している。打ち上げ・衛星製造・部品供給・通信技術をすべて自社で持つことで、特定の顧客に依存しない収益基盤を作る戦略だ。なお3月末には2800機規模の商業コンステレーション「Equatys」の衛星バスメーカーとしてロケットラボが最有力候補に浮上しているという報道も出ており、実現すれば過去最大規模の衛星製造案件となる。

審査が長引いた理由と欧州進出の意味

買収完了後もMynaricはミュンヘンに本社を維持する。これによりロケットラボは初めて欧州に拠点を持つことになり、欧州の政府・民間顧客へのアクセスが格段に向上する。Mynaricの買収審査が約1年と長引いた背景には、軍事転用可能な技術を持つドイツ企業を米国企業が取得することへのドイツ政府の慎重な姿勢があった。最終的に承認が下り、ロケットラボの「宇宙産業のティア1サプライヤー」への変身がまた一歩進んだ。

参考文献

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