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月探査

ノースロップ・グラマン、月面航法装置LR-450を発表

2026-05-14
ノースロップ・グラマン、月面航法装置LR-450を発表

ウェッブ望遠鏡の技術を月面航法に転用――LR-450の全容

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米防衛大手ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)が、GPS信号が届かない月周辺空間で宇宙機の自律航法を可能にするガイダンスシステム「LR-450」を発表した。同システムは、同社が主契約企業として製造に携わったジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の姿勢制御・航法技術を応用して開発されたもので、月軌道および月面で活動する探査機・着陸機・有人宇宙船に搭載されることを想定している。ノースロップ・グラマンは、アルテミス計画をはじめとする各国の月面ミッションが本格化する中で、月面航法市場への参入を明確に打ち出した格好だ。

なぜ月にはGPSがないのか――深宇宙航法の課題

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地球上では、米国のGPSをはじめ、欧州のガリレオ、中国の北斗、日本の準天頂衛星システム(みちびき)など、複数のGNSS(全球測位衛星システム)が高精度の測位サービスを提供している。しかし、これらの衛星はすべて地球周回軌道上に配置されており、そのシグナルは月面や月軌道にまで安定して届かない。地球から月までの距離は約38万kmあり、信号の減衰と遅延は避けられない。

現在、月や深宇宙で活動する探査機は、地上局からの電波をもとに距離と速度を計測するDSN(深宇宙ネットワーク)による追跡か、搭載されたスタートラッカー(恒星センサー)と慣性航法装置の組み合わせに頼っている。しかし、月面着陸の最終フェーズや、月周回軌道上での他の宇宙機とのランデブー・ドッキングには、より高精度かつリアルタイムに近い自律航法が求められる。NASAが計画するアルテミス計画では、オリオン宇宙船と月面着陸機のドッキングが不可欠であり、こうした精密航法技術のニーズは今後急速に拡大する。

ウェッブ譲りの精密センサー技術――LR-450の仕組み

LR-450の技術的な核心は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で培われた高精度のセンサー技術と姿勢決定アルゴリズムにある。JWSTは太陽-地球系の第2ラグランジュ点(L2)、地球から約150万km離れた地点に位置しており、GPSの恩恵を一切受けられない環境で極めて精密な姿勢制御を実現している。その精度は、約0.001秒角(1度の360万分の1)ともいわれ、この技術基盤がLR-450に継承された。

ノースロップ・グラマンによると、LR-450は恒星観測を基本とした天測航法にくわえ、月面の地形特徴を照合するTRN(Terrain Relative Navigation=地形相対航法)機能を統合する設計思想を持つ。TRNは、カメラやライダーで取得した地表画像と事前にマッピングされた地形データベースとを照合し、宇宙機の位置を自律的に特定する技術だ。NASAの火星探査ローバー「パーサヴィアランス」の着陸時にも類似技術が使われた実績がある。

LR-450は「450」の名称が示す通り、恒星センサーの視野角や光学系の仕様に由来するとみられるが、詳細なスペックは現時点で完全には公開されていない。ただし、同社はシステムの小型・軽量化を重視しており、商業月着陸機から大型の有人宇宙船まで幅広いプラットフォームに搭載可能な汎用性を目指しているとしている。

月面航法は「市場」になるのか――競合と展望

ノースロップ・グラマンがLR-450で狙う「月面航法市場」は、まだ黎明期にある。しかし、NASAのアルテミス計画に加え、ESA(欧州宇宙機関)のムーンライト計画(月周回通信・測位インフラ構想)、中国の国際月面研究ステーション(ILRS)計画など、月面活動の本格化を見据えた動きは世界的に加速している。ESAは月面でのGNSS的な測位サービスの構築を検討しており、そのインフラが整うまでの過渡期には、LR-450のような自律航法システムの需要が高まる。

競合としては、ハニウェルやL3ハリス・テクノロジーズといった航法機器メーカーが深宇宙用の慣性航法装置を手がけている。また、NASAのジェット推進研究所(JPL)も独自のTRN技術を研究しており、月面着陸ミッション向けの航法ソフトウェアを開発中だ。ノースロップ・グラマンはJWST開発で培った実績と、既存の防衛・宇宙事業との統合力を武器に差別化を図る構えだ。

NASAは2027年に予定するアルテミス III(地球軌道でのランデブー・ドッキング試験)を経て、その後の月面着陸ミッションへと段階的に進む計画を示している。月面着陸の精度要件が厳格化すればするほど、LR-450のような高精度自律航法への需要は高まる。ノースロップ・グラマンが狙うのは、単一ミッションへの搭載ではなく、月面活動全体のインフラとしての地位確立だ。ウェッブ望遠鏡という「深宇宙での実績」を持つ同社がこの分野にどこまで食い込めるか、今後の動向が注目される。

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