Falcon 9、21機の軍事通信衛星を低軌道へ投入——打ち上げ成功
2026年7月16日20時32分36秒(UTC)、SpaceXのFalcon 9ロケットがカリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられ、米宇宙軍宇宙開発局(SDA)向けの軍事通信衛星21機の軌道投入に成功した。ミッション名は「SDA Tranche 1 Transport Layer E」で、米軍が推進する低軌道通信衛星コンステレーション「Proliferated Warfighter Space Architecture(PWSA)」の構築に向けた第一段階(Tranche 1)の一角を担う。
Falcon 9の第1段エンジンは点火後、9基のMerlinエンジン(海面推力合計約845トン)が燃焼し、機体を大気圏外へ押し上げた。所定の高度で第1段と第2段が分離したのち、第2段のMerlin Vacuumエンジンが点火して軌道投入シーケンスへ移行。コーストフェーズを経て再点火を行い、21機の衛星を順次分離した。全長70メートル、直径3.7メートルのFalcon 9は、LEO(低地球軌道)への打ち上げ能力22.8トンを持ち、ヴァンデンバーグ基地からの極軌道・太陽同期軌道投入に適したロケットとして頻繁に運用されている。
PWサの「Tranche 1」完成に向けた6分の5——光学衛星間リンクが核心技術
このミッションで最も注目すべきポイントは、搭載された衛星が備える「光学衛星間リンク(OISL:Optical Inter-Satellite Links)」技術にある。
PWSAのTranche 1 Transport Layerは、SDAが発注した6回の打ち上げで構成されるコンステレーション計画の一部であり、今回の「E」ミッションはその5本目に相当する。従来の軍事通信衛星が地上局を介した無線周波数(RF)クロスリンクに依存してきたのに対し、このコンステレーションでは衛星同士をOISLで直接接続する。光通信によるリンクはRFクロスリンクと比較して遅延が大幅に小さく、帯域幅も広い。Ka帯を用いた運用が想定されており、ステレオカバレッジ(複数衛星からの重複カバレッジ)と動的なネットワーク制御により、ハンドオフの簡素化、広帯域の確保、そして故障時の耐性向上を同時に実現する設計となっている。
戦闘機、無人機、艦艇、地上部隊といった「全領域の戦闘プラットフォーム」に対して、低遅延かつ途切れにくい軍事データ通信を提供するのがこのアーキテクチャの目的だ。OISLをコンステレーション全体に組み込んだ設計は、地上局への依存を減らすことで、地上インフラが脆弱な紛争地域や通信妨害環境下でも安定した接続性を維持できる点で、従来の軍事通信衛星とは一線を画す。
ヨーク・スペース製21機——量産型バスで低コスト・大量展開を実現
今回打ち上げられた21機の衛星はすべて、コロラド州デンバーに本拠を置くヨーク・スペース・システムズ(York Space Systems)が製造した。同社は標準化された衛星バス「S-クラス」を中心に展開しており、大量生産に適した設計と短い製造リードタイムを強みとする。SDAはTranche 1全体を通じて複数のメーカーに分散発注することで、特定企業への依存を避けながら製造能力の競争を促す調達戦略を採っており、ヨーク・スペースはその主要サプライヤーの一社として位置づけられている。
衛星1機あたりの詳細な質量やバス仕様は公表されていないが、Falcon 9のペイロードフェアリング(直径5.2メートル)に21機をスタック搭載したことから、小型から中型クラスの衛星であると推定される。軌道高度や軌道面の詳細もSDAは公式には開示していないが、LEOコンステレーションとして設計されていることから、高度は概ね1,000キロメートル以下の領域とみられる。
Tranche 1完成へ残り1ミッション——Tranche 2への移行も視野に
SDAのTranche 1 Transport Layerは今回の「E」打ち上げを含め、計6回の打ち上げで構成されている。残る「F」ミッションが完了すれば、Tranche 1の輸送層コンステレーションは一応の完成を見ることになる。
SDAはすでにTranche 2の調達・開発も進めており、Tranche 1で培った設計・運用ノウハウを踏まえた能力拡張が計画されている。Tranche 2では衛星数の増加や搭載センサー・通信性能のさらなる向上が見込まれており、PWS全体の完成に向けた段階的な展開が続く。SpaceXはこれまでもSDAミッションの打ち上げを複数担当しており、今後の打ち上げにおいても主要な輸送手段として引き続き機能することが見込まれる。
参考記事
- Launch Library 2 (The Space Devs)




