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ロケット

ニューグレンロケット再使用ブースターで初の燃焼試験を実施

2026-04-18
ニューグレンロケット再使用ブースターで初の燃焼試験を実施

回収ブースターによる初のスタティックファイア成功

Blue Originは日本時間4月16日夜、同社の大型ロケット「New Glenn(ニューグレン)」で回収・再使用されるブースターとしては初となるスタティックファイア(静的燃焼試験)を実施しました。試験ではブースター下部に搭載された7基のBE-4エンジンすべてに点火し、約16秒の燃焼が行われています。Blue Originは静的燃焼試験の完了を受け、4月19日(日曜日)午前6時45分EDT(日本時間19日夜)の打ち上げを公式に発表しています。

New Glennは全長約98m、直径約7mの2段式ロケットで、SpaceXのFalcon 9と同様にブースターを着陸回収して繰り返し使用する設計です。BE-4エンジンは液体酸素と液化天然ガス(LNG)を推進剤とする酸素リッチ二段燃焼サイクルエンジンで、1基あたり約2,400kN(約245トン重)の推力を発生します。7基束ねた場合の離昇推力は約17,000kN(約1,700トン重)に達し、低軌道(LEO)への投入能力は約45トンとされています。

再使用ロケット競争における意味

             燃焼試験の様子          

今回の試験が注目される最大の理由は、「一度飛行したブースターをそのまま再び燃焼試験に供した」という事実にあります。SpaceXはFalcon 9ブースターの再使用を2017年から本格化させ、2026年現在では1基あたり20回以上の飛行実績を持つ機体も存在します。一方、Blue Originはこれまで弾道飛行用の小型ロケット「New Shepard」でブースター再使用の経験を積んできたものの、軌道投入級のNew Glennでは今回が再使用に向けた最初の大きなマイルストーンとなります。

New Glennの初飛行は当初2021年に予定されていましたが、開発の遅延を経て2025年1月にようやく実施されました。この初飛行ではペイロードのBlue Ring Pathfinderを軌道に投入することには成功したものの、ブースターの洋上着陸船「Jacklyn」への着陸は達成できませんでした。その後の飛行でブースター回収に成功し、今回の再使用試験につながっています。

Blue Originにとって、回収したブースターが再飛行に耐えうる状態にあることを実証するのは商業的にも極めて重要です。New Glennは米宇宙軍のNSSL(国家安全保障宇宙打ち上げ)Phase 3の契約を獲得しており、Amazon傘下のProject Kuiperの衛星群打ち上げも予定されています。高頻度の打ち上げ需要に応えるには、ブースターの迅速な再使用が不可欠です。

New Glennの改良計画と完全再使用への道

              現在と改良後のニューグレンロケットの比較

今回の再使用試験は、Blue Originが描くより大きな絵の第一歩に過ぎません。同社は「Project Jarvis」と呼ばれる社内プロジェクトで、現在は使い捨てとなっている第2段の再使用化を研究しています。第2段まで回収・再利用できれば、ロケット全体が完全再使用となり、打ち上げコストの大幅な削減が見込まれます。 エンジン面でも改良が予定されています。第1段のBE-4および第2段のBE-3Uはいずれも推力向上型へのアップグレードが計画されており、フェアリング(ペイロードを覆うカバー)の再使用化や新設計のタンク採用も視野に入れられています。さらに将来的には「New Glenn 9x4」と呼ばれる派生型も構想されており、第1段エンジンを現行の7基から9基に増やすことで、低軌道への投入能力を現行比約50%向上させる計画です。

大型ロケット市場の構図

2026年現在、軌道投入級の再使用ロケットを運用しているのはSpaceXのみという状況が長く続いてきました。Falcon 9は2025年だけで年間100回を超える打ち上げを記録し、圧倒的な実績を積み上げています。さらにStarshipの開発も進み、完全再使用の超大型ロケットが視野に入りつつあります。

この市場にBlue OriginがNew Glennの再使用運用で本格参入すれば、価格競争と打ち上げ頻度の両面で業界に変化をもたらす可能性があります。欧州のAriane 6やULA(United Launch Alliance)のVulcan Centaurはいずれも使い捨て型であり、再使用によるコスト削減という点でBlue Originは差別化を図れる立場にあります。今週末の打ち上げが成功すれば、New Glennは「飛行実証済みの再使用大型ロケット」という肩書きを正式に手にすることになります。

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