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ロケット

New Glenn第3号機、ブースター再使用に初成功も衛星軌道投入に失敗

2026-04-20
New Glenn第3号機、ブースター再使用に初成功も衛星軌道投入に失敗

New Glenn 3号機が打ち上げ――ブースター再使用は成功、上段に異常

*出典: 公式Xより 打ち上げの様子

2026年4月19日午前6時45分(米東部夏時間、日本時間同日午後7時45分)からの打ち上げウィンドウ内に、Blue OriginのNew Glennロケット第3号機(NG-3)がフロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられました。今回のミッションでは、New Glennとして初めて再使用ブースターを用いた飛行が実施され、第1段ブースターの着陸・再飛行という大きなマイルストーンを達成しています。しかし一方で、第2段(上段)に不具合が発生し、搭載していたAST SpaceMobileの通信衛星「BlueBird 7」を所定の軌道に投入することができませんでした。AST SpaceMobileは同衛星が喪失したことを正式に発表しており、ミッションとしては部分的な成功にとどまる結果となりました。

New Glennは全長約98m、第1段にBE-4エンジン7基を搭載する大型ロケットで、Blue Originが開発する部分再使用型の軌道投入機です。初号機(NG-1)は2025年1月に打ち上げられ、軌道投入には成功したものの、ブースターの洋上着陸には失敗。2号機(NG-2)は2025年11月頃に飛行し、ブースター着陸に初めて成功しました。今回のNG-3は、そのNG-2で回収されたブースターを再整備して再び飛ばすという、New Glennにとって初の「再使用飛行」でした。

再使用ブースター初飛行が持つ意味

*出典: 公式Xより 着陸船への着地の様子

ブースターの再使用はロケットのコスト削減と打ち上げ頻度向上に直結する技術であり、SpaceXのFalcon 9が実証して以来、業界全体の標準目標になっています。Blue Originにとって、New Glennのブースターを2回目の飛行に供することは、同社が単なる「着陸実験」の段階を超え、運用レベルの再使用サイクルに入ったことを示す重要な一歩です。

NG-3のブースターは打ち上げ後、エンジンを再点火して大西洋上のドローン船への着陸に再び成功しました。これにより同一機体での2回の飛行・2回の着陸を達成したことになります。Falcon 9のブースターが20回以上の再使用を実現している現状と比較すると、まだ道のりは長いものの、Blue Originが再使用運用の実績を着実に積み上げている点は評価に値します。

上段の不具合とBlueBird 7の喪失

画像

*出典: ホームページよりBlueBird 7のイメージ

ミッションの成否を分けたのは、第2段に搭載されるBE-3Uエンジンの挙動でした。Blue Originの発表によると、上段に「オフノミナル(想定外の状態)」が発生し、BlueBird 7は目標軌道とは異なる軌道に投入されました。SpaceNewsの報道では、上段のマルフンクション(機能不全)と明確に表現されています。

BlueBird 7は、AST SpaceMobileが展開する宇宙基地局ネットワーク「BlueBird」シリーズの7号機で、地上の一般的なスマートフォンに衛星経由の通信サービスを直接提供する「Direct-to-Cell」技術の商用衛星です。同社はすでにBlueBirdシリーズの複数機を軌道上で運用しており、今回の衛星喪失はサービス展開計画に一定の影響を与える可能性があります。AST SpaceMobileは同衛星の喪失(lost)を公式に宣言しました。

New Glennの上段に関しては、初号機でも第2段の再着火タイミングに関する懸念が報じられた経緯があります。第1段が順調に再使用運用へ進む一方で、使い捨てである第2段の信頼性確保が依然として課題であることが、今回のミッションで改めて浮き彫りになりました。

Blue Originが直面する「信頼性の壁」

New Glennは、米宇宙軍やNASAからの打ち上げ契約を獲得しており、商業的にも政府ミッションとしても高い期待を背負うロケットです。米宇宙軍の国家安全保障宇宙打ち上げ(NSSL)フェーズ3契約では、ULAのVulcanとともに主力ロケットの一角を担う位置付けにあります。

しかし3回の飛行のうち、ペイロードの完全な軌道投入に成功したのは初号機のみという状況は、顧客の信頼を勝ち取るうえで大きな課題です。ブースター再使用の実績は打ち上げコストの競争力を裏付ける材料になりますが、上段の不具合が繰り返されれば、衛星オペレーターは契約に慎重にならざるを得ません。

Blue Originは今後、上段の不具合の原因究明と対策を急ぐことになります。同社はNG-4以降のミッションをすでに計画しており、NASAのProject Kuiper(Amazonの衛星インターネット計画)向け打ち上げなど大型契約も控えています。ブースター再使用という「攻めの成果」と、上段信頼性という「守りの課題」をどう両立させるか。New Glennの商業的成功は、次の数回のミッションにかかっています。

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