Blue Originが、大型ロケット「New Glenn(ニューグレン)」の3号機で発生した打ち上げ失敗について調査を完了し、飛行再開の準備を進めていることが明らかになりました。同社にとってNew Glennは商業打ち上げ市場への本格参入を担う基幹ロケットであり、今回の調査完了と再開判断は今後の事業展開を左右する重要な節目となります。
New Glenn 3号機で何が起きたのか
Blue Originが開発・運用する大型ロケットNew Glennは、全長約98m、直径約7mという巨体を持つ2段式のロケットです。第1段にはBE-4エンジン7基を搭載し、SpaceXのFalcon 9と同様に第1段の着陸・再使用を前提とした設計が採用されています。
初号機は2025年1月にフロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられ、第2段の軌道投入には成功したものの、第1段の洋上着陸には失敗しました。それでも初飛行としては一定の成果を挙げたと評価されました。続く2号機でも段階的に実績を積み重ねましたが、3号機の飛行中に問題が発生し、ミッション失敗に至りました。
Blue Originは3号機の失敗後、速やかに調査チームを立ち上げ、テレメトリデータ(飛行中にロケットから送られる各種計測データ)の解析や地上での再現試験を実施。失敗原因の特定と是正措置の策定を進めてきました。同社は今回、その調査が完了したことを発表し、打ち上げ再開に向けた道筋を示しています。
SpaceX一強時代に風穴を開けられるか
現在の大型ロケット商業打ち上げ市場は、SpaceXのFalcon 9がほぼ独占的な地位を築いています。2026年だけでもSpaceXは5月24日時点で60回目の軌道飛行を数え、週に2回以上のペースで打ち上げを実施するという驚異的な運用実績を誇ります。
この市場にBlue Originが参入する意義は極めて大きいものがあります。米国防総省の国家安全保障宇宙打ち上げ(NSSL)プログラムは、打ち上げ手段の冗長性を重視しており、SpaceX以外の信頼できるプロバイダーを必要としています。また、商業衛星コンステレーション事業者にとっても、打ち上げ事業者の選択肢が増えることは価格交渉力やスケジュール柔軟性の面で直接的な利益となります。
New Glennは低軌道(LEO)に約45トン、静止トランスファー軌道(GTO)に約13トンの打ち上げ能力を持ち、Falcon 9を上回るペイロード容量を備えています。再使用型の第1段による打ち上げコストの低減が軌道に乗れば、大型衛星や複数衛星の同時打ち上げにおいてFalcon 9やFalcon Heavyと競合できるポジションに立つことになります。
New Glennの開発経緯と3回の飛行実績
New Glennの開発は2012年頃に始まり、当初は2020年代前半の初飛行が見込まれていました。しかし、心臓部であるBE-4エンジンの開発が難航し、スケジュールは繰り返し延期されました。BE-4は液体酸素と液化天然ガス(メタン)を推進剤とする酸素リッチ段階燃焼サイクルエンジンで、推力は約250トンに達します。このエンジンはUnited Launch Alliance(ULA)のVulcanロケットにも採用されており、Blue Originにとってはロケットエンジン供給事業としても重要な収益源です。
2025年1月の初号機打ち上げは、長い開発期間を経てようやく実現した歴史的なフライトでした。第2段の点火と軌道到達に成功したことで、New Glennは基本的な飛行能力を実証。第1段ブースターの回収は失敗しましたが、Blue Originの創業者ジェフ・ベゾス氏は「初飛行で第1段回収まで成功させる必要はない」との姿勢を示し、段階的な改良方針を打ち出していました。
2号機では第1段の着陸シーケンスにも改良が加えられ、運用実績の蓄積が進みました。しかし3号機で再び問題が表面化し、ミッション失敗という結果に至りました。ロケット開発において初期の飛行で失敗が生じること自体は珍しくありません。SpaceXのFalcon 1も最初の3回の打ち上げに失敗し、4号機でようやく軌道投入に成功した経緯があります。重要なのは失敗の原因を正確に特定し、確実に修正できるかどうかです。
飛行再開のスケジュールと残された課題
調査の完了を受け、Blue Originは是正措置を反映した4号機の準備を進めているとみられます。ただし、具体的な再開時期についてはまだ公式に明示されていません。
Blue Originが直面する課題は技術面だけにとどまりません。同社はすでにAmazonのProject Kuiper衛星コンステレーション向けにNew Glennでの打ち上げ契約を結んでおり、飛行再開の遅れはAmazonの衛星展開計画にも波及します。AmazonはProject Kuiperの衛星をSpaceXやULA、欧州のArianespaceにも発注していますが、New Glennの稼働はベゾス氏が率いるBlue Origin・Amazon両社の戦略上、極めて重要な位置づけにあります。
また、NSSLフェーズ3の契約においても、New Glennは米宇宙軍の打ち上げ手段として期待されています。信頼性の実証が遅れれば、競合するULAのVulcanやSpaceXに契約が集中するリスクも生じます。
今回の調査完了は、New Glennの開発と商業運用における一つのハードルを越えたことを意味します。4号機での飛行再開が順調に進み、第1段ブースターの再使用を含めた完全な運用体制が確立されれば、大型ロケット市場の競争環境は大きく変わることになります。Blue Originが2026年中にどこまで巻き返せるか、次のフライトが持つ意味は極めて重いものです。




