市民科学者が、低周波電波干渉計「LOFAR(Low Frequency Array)」のデータを解析する中で、これまでに見たことのない形態を持つ巨大電波銀河を発見した。2026年6月27日、この天体が「RAD-BAARG(Bow-And-Arrow Radio Galaxy:弓矢形電波銀河)」として正式に報告されたことが明らかになった。こじし座の方向、地球から約21億光年の距離に位置するこの天体は、全長約180万光年に及ぶ弓矢を模した特異な電波構造を持つ。
弓と矢が織りなす電波構造——RAD-BAARGの全容
RAD-BAARGは、大きく「弓(Bow)」と「矢(Arrow)」の2つの構造に分かれる。弓に相当する部分は、活動銀河核(AGN)から噴き出す相対論的ジェットが形成した弧状の電波ローブで構成されており、その曲率は銀河が宇宙の大規模構造の中を高速で移動することで生じたと考えられている。矢に相当する細長い構造は、ジェットそのものの痕跡とみられ、弓の弧に対してほぼ垂直に交わる配置が「弓矢」という命名の直接的な根拠となった。全長は約180万光年で、天の川銀河の直径(約10万光年)の18倍に相当する規模だ。
市民科学者による発見と「銀河動物園」の役割
この天体を最初に特定したのは、市民科学プロジェクト「Galaxy Zoo」に参加するボランティアだ。Galaxy ZooはLOFARなどの電波望遠鏡が取得した膨大な観測データを一般市民が目視分類するプラットフォームで、機械学習では見逃しやすい形態的特徴を人間の目が捉えることに強みがある。RAD-BAARGの弓矢形という非常に特異なモルフォロジー(形態)も、まさにこのアプローチによって浮かび上がった。発見後、専門の天文学者チームがLOFARの高解像度データで追観測を行い、構造の実在を確認した上で論文としてまとめた。
形成メカニズムの解明と類似天体の探索が次の焦点
弓矢形という構造がどのように形成されたかについては、現段階では仮説の域を出ていない。最も有力視されているのは、ホスト銀河が属する銀河団内のガスとの相互作用だが、弓部分の曲率や矢部分の細さを同時に説明できるモデルはまだ確立されていない。また、RAD-BAARGが一例として存在するのか、それとも未発見の類似天体が複数あるのかも未解明だ。LOFARが進めるサーベイ観測「LoTSS(LOFAR Two-metre Sky Survey)」のデータは今後も蓄積が続いており、Galaxy Zooを通じた市民科学者の目視分類との組み合わせが、同種の天体を体系的に探索する主要な手段となる見通しだ。



