LINKが南太平洋から打ち上げ、スウィフト天文台の軌道引き上げに挑む
2026年7月2日、NASAのニール・ゲーレルズ・スウィフト天文台(Swift Observatory)の軌道を引き上げる史上初のミッションが、打ち上げ準備を完了した。打ち上げウィンドウは同日午前5時09分(米東部時間)、マーシャル諸島共和国に属する南太平洋のクワジェリン環礁から設定されている。ロボット宇宙機「LINK」はKatalyst Space社が開発・製造したもので、現役の科学観測衛星に対してこうした軌道変更サービスを行う試みは世界初となる。
スウィフト天文台は2004年に打ち上げられ、ガンマ線バーストや高エネルギー天体現象の観測において20年以上にわたって科学的成果を上げてきた衛星だ。現在の軌道高度は約550kmの低軌道だが、LINKが軌道を引き上げることで大気抵抗による減衰を抑制し、衛星の運用寿命を延長することが目的となっている。このミッションは単なる延命措置にとどまらず、既存の科学衛星をロボット宇宙機が「サービシング」するという新たな運用モデルの実証でもある。
軌道上サービシングの実証機として持つ産業的意義
LINKが採用するアプローチは「軌道上サービシング(On-Orbit Servicing)」と呼ばれる技術領域に属する。従来、宇宙機は一度打ち上げられると推進剤が尽きるか機器が故障するまで運用され、その後は廃棄されるのが通例だった。LINKはドッキング機構を用いてスウィフト天文台に接触し、自機の推進系を使って軌道を変更する計画で、同様の手法が将来的に複数の老朽化衛星に適用できるかを検証する場となる。Katalyst Space社はこのミッションを商業サービスとして展開する構想を持っており、NASAはその最初の顧客という位置づけだ。
スウィフト天文台はNASAのほかにもイタリア宇宙機関(ASI)やイギリスの研究機関と共同運用されており、天文学コミュニティへの影響は広範囲に及ぶ。軌道引き上げが成功すれば、推進剤節約の観点からも衛星の観測継続期間が実質的に延長される。一方で、設計段階でドッキングを想定していない衛星へのランデブーおよびドッキングは技術的難度が高く、ミッションの成否が今後の商業サービシング市場の形成に直結する。
ドッキング成功後の軌道変更と今後の確認事項
打ち上げ後、LINKはスウィフト天文台への軌道遷移と自律ランデブーを経てドッキングを実施する予定だ。ドッキング成功後に推進を行い、軌道を目標高度まで引き上げることがミッションの主要マイルストーンとなる。NASAおよびKatalyst Space社はドッキングの実施タイミングや目標軌道高度の詳細について、打ち上げ後の状況に応じて情報を公開していく見通しだ。スウィフト天文台の科学観測が軌道変更中および変更後にどのようなスケジュールで再開されるかについても、追加の発表が待たれる状況にある。



