Falcon 9、MRV-1をGEOへ投入――ペイロード分離まで正常飛行
2026年7月21日21時15分(UTC)、SpaceXのFalcon 9ロケットが米フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられ、ノースロップ・グラマン/SpaceLogisticsが開発したミッション延長ペイロード「MRV-1」の軌道投入に成功した。ペイロードは正常に分離(Payload Deployed)が確認されている。
Falcon 9は全長70m、直径3.7m、2段式の液体燃料ロケットだ。第1段にはMerlin 1Dエンジンを9基クラスター搭載し、海面上推力は約7,607kN(約776トン)を発生する。第2段はMerlin Vacuumエンジン1基を搭載し、真空中推力は約934kNを誇る。GEO(静止軌道)トランスファー軌道への打ち上げ能力は約8,300kgに達する。
フライトシーケンスは標準的な手順で進んだ。リフトオフ後、第1段エンジンは約2分30秒燃焼し、Max-Qと呼ばれる最大動圧点を通過。段間分離後、第2段Merlin Vacuumエンジンが点火し、GEOトランスファー軌道への投入燃焼を実施した。フェアリングの分離を経て、MRV-1ペイロードが軌道上へ展開され、ミッションの第一段階が完了した。
「衛星に燃料補給ではなく、推進ユニットごと取り付ける」——MRVが変えるGEOサービスの概念
今回のミッションで最も注目すべきは、ロケットそのものではなくペイロードの性格にある。MRV-1(Mission Robotic Vehicle 1)は、GEO(静止軌道、高度約35,786km)上に展開される自律型のロボット宇宙機で、最大30基のMEP(Mission Extension Pod)を搭載・運搬し、顧客の衛星へ順次取り付けていく設計となっている。
MEP1基の質量は約400kgで、これを燃料が枯渇しかけた顧客衛星の外部にMRVがロボットアームで捕捉・ドッキングさせ、固定する。取り付けられたMEPが推力と姿勢制御を代替することで、衛星本体の設計寿命を最大6年間延長できる。対象となる衛星の質量は2,000kgクラスが想定されている。
従来、燃料切れが近い静止衛星は廃棄軌道(グレーブヤード軌道)へ移送するしかなく、数百億円規模の資産が失われてきた。MEPはその衛星に外付けの「エンジンパック」として機能するため、衛星本体の改修なしに寿命延長を実現できる点が画期的だ。1機のMRVが軌道上でMEPを順次配布していく「衛星サービスステーション」的な運用モデルは、GEO商業衛星の経済性を根本から変える可能性を持つ。
ノースロップ・グラマンはすでにMEV(Mission Extension Vehicle)シリーズでIntelsat衛星へのドッキングサービスを実績として持っているが、MRVはその発展型であり、1機で複数顧客・複数衛星へのサービスを可能にした点でスケールが異なる。
IntelstatとOptusの衛星3機が最初のサービス対象に
MRV-1が今回搭載するMEPは計3基で、それぞれ打ち上げ後にMRVから分離され、対象衛星へ順次取り付けられる計画だ。このうち2基はIntelsat(国際通信衛星事業者)の静止衛星2機に、残る1基はオーストラリアの通信事業者Optusの静止衛星1機にサービスを提供する契約となっている。
Intelstatは過去にノースロップ・グラマンのMEV-1・MEV-2によるドッキングサービスを受けた実績を持つ顧客であり、今回もMRVプラットフォームの初期顧客として名を連ねた。Optusにとっては初のミッション延長サービス適用となる。
MRVが軌道上でMEPを1基ずつ捕捉し、対象衛星への接近・ドッキング作業を行うには、精密なランデブー操作と軌道遷移が必要で、一連のサービス完了まで数カ月単位の運用期間が見込まれる。MRV自身は残余MEPの搭載能力を持ち続け、将来的に追加の顧客衛星へのサービスにも対応できる。
MRVの軌道上運用開始と、拡大するGEOサービス市場
MRV-1は今後、GEO投入に向けた軌道遷移を自力で実施し、まずIntelsat向けの2基のMEP配布から運用を開始する見通しだ。30基というMEP搭載能力のうち今回は3基のみを搭載しているが、SpaceLogisticsはMRVの長期的な運用の中で追加ミッションへの対応を想定している。
地上では、ノースロップ・グラマンとSpaceLogisticsが後継機や追加MEPの補充ミッションについて検討を進めているとされる。GEO帯は多数の商業通信衛星が集中するエリアであり、寿命延長サービスの潜在市場は大きい。Falcon 9はその実績と信頼性からGEOトランスファー軌道打ち上げの主力ロケットとして機能しており、今回のミッションもその運用の一環として位置づけられる。
参考記事
- Launch Library 2 (The Space Devs)



